2009/12/09

グラン・トリノ


(一本も駄作を作らない監督)クリント・イーストウッド。今回も外してません。しかも俳優としての出演は今回で最後になると公言しているそうです。
イーストウッド演じる朝鮮戦争従軍経験のあるウォルト・コワルスキーは妻に先立たれ、偏屈で昔気質なため息子家族ともそりが合わず、愛犬と共にマンネリな日々を送っている。彼の住む地区は治安も悪く移民が増え、彼の隣家にもモン族の家族が暮らしている。彼らを疎ましく思っていたウォルトだが、ひょんな事からウォルトの愛車(グラン・トリノ)を盗もうとしたことのある燐家の少年(タオ)をモン族のチンピラから助け、気さくな姉の(スー)に誘われるがままに(おとなり付き合い)を初めていく。
(モン族)のアジア的なおもてなしに戸惑いつつも、次第に嬉しそうに受け入れて行くウォルト爺のシーンが最高に素敵です。そして彼らの凸凹なやり取りがかなり笑えます。イーストウッドの映画でこんな風に笑えるなんて思ってもみませんでした。

やがて、父親のいないタオ少年と父息子、または師弟関係のような関係を築いていくウォルト、偏屈だけどおそらく元来おせっかいな性格の彼は堰を切ったように(残された時間)を味わいます。しかしそれを疎ましく思うモン族のチンピラ達によって物語は悲劇へと進んでいきます。
ウォルトは凄惨な朝鮮戦争の自身での所行をずっと許せないでいました。しかし、改めて暴力でしか解決できない問題が立ちふさがった時の彼の決断は悲しいですが、清々しいラストシーンへとつながっていきます。

アメリカの郊外と、当たり前のようにライフルを持つアメリカ人、なんだか昔の事件を思い出します。
良い映画ですが、とてもアメリカ的な作品だと思います。

2009/11/26

ウォッチメン


私の大好物のジャンル、アメコミ・ヒーローもの。
予備知識なしに観たのですが、かなりダークな異色作でした。
舞台は80年代、ソ連との冷戦真っ最中のアメリカ、犯罪が蔓延る社会に現れた自警団の集団が(ウォッチマン)です。(正確には2代目ですが、まあよいとして)元が人間ですからパッと見コスプレしたヒーローおたく。性格もおのおの一癖二癖あり、彼らのキャラクターだけで(ヒーロー論)をご飯3杯分くらい語れちゃいそうです。そしてニクソンが打ち出した法律でヒーロー活動が違法になり、それぞれ隠居したり、政府直属になったりもぐりで活動したりしていたところ、何者かによってかつてのウォッチマンの一人が殺され、もぐりのヒーロー(ロールシャッハ)が事件の真相を探るうち、驚くべき事態に直面し。。。
この作品のキーマンの一人が(ミスターマンハッタン)というヒーローなのですが、彼だけ科学事故の影響で超自然的な存在となっていて、ウォッチマンの一員でありながら彼だけパワーも存在も異質です。地球を生かすも殺すも彼次第な力を持っているため、価値観も常人とかけ離れてしまい、まるで旧約聖書の(神)のよう。服を着るのも嫌になったようでしまいにはパンツすらはいていません。
この(ミスターマンハッタン)のモロ見えと、グロテスクな描写のせいか本作はR15指定です。
なんとなく(デビルマン)の世界感を彷彿させる気がします。

2009/11/15

その土曜日、7時58分


シドニー・ルメット監督の社会派サスペンスです。
一見エリートとして成功しているが麻薬に溺れ、会社の金を横領している兄が、娘の養育費も払えないうだつのあがらない弟に強盗話を持ちかける。ターゲットは両親が経営する郊外の宝石店。勝手知ったる店ならば、誰も傷つけず大金を手に入れられるはずだった。しかし、現実はそう簡単にいくわけもなく。。。

兄役のフィリップ・シーモア・ホフマン、弟役のイーサン・ホークをはじめ、キャストは好演しております。登場人物皆が問題を抱えていて自己中心的で、誰かに感情移入するのは難しいです。物語の軸になるのは(家族)ですが、それぞれが相手に対して抱いている不信感や冷めた感情、目的を正当化する為のエクスキューズにしていた不満が露呈した途端、まるで転がるように悲劇が連鎖していきます。
まるで(ハムレット)や(タイタス・アンドロニカス)のようなシェイクスピア悲劇を観ているような感じがしました。

原題は(Before The Devil Knows You`re Dead)。ナイスタイトル。

2009/11/09

ヤング@ハート


アメリカに実在するシルバーコーラス隊のコンサートまでの数週間を追ったドキュメンタリーです。
このコーラス隊のレパートリーはポップやロック。それもストーンズ、クラッシュからソニックユースまで幅広いです。彼らは特別にロックが好きというわけではないので、あれやこれや試行錯誤で課題曲を自分達のものにしていきます。主催者のボブはスパルタで彼らを老人扱いせず、厳しく駄目だしし、必要ならメンバーチェンジも辞しません。そう、彼らは本当に(プロフェッショナル)なのです。そして(特別)な人達です。平均年齢は80以上だけど、言葉は明白で哲学的、そして映画的です。すごく素敵な映画なので、本当に感動したのですが、この映画の欠点はドキュメンタリーである事が信じられないくらい(完璧過ぎる)ことだと思います。
人生のオマケ期間を生きる彼らは、途中挿入されるミュージックビデオのような映像さながらビートルズの(マジカル・ミステリー・ツアー)のように思えます。
何だかちょっとけなしているような感じになってしまいましたが、色んな人にお薦めしたい素敵な映画です。
ただ本当に(完璧過ぎる)んです。

2009/10/30

ハイ・フィデリティ


最近の作品ではありません。
が、大好きな一本。私の青春マスターピースです。
中古レコード屋を経営しているロブ(ジョン・キューザック)はマンネリの日々を同じ音楽オタクの従業員と共に過ごしている。弁護士をしてる恋人のローラは何事にも前進しようとしない彼に対して別れ話を切り出し、ロブは彼女との別れは(辛い失恋のTOP5)にも入らないと強がるが。。。
どんな人間か、ではなく何が好きか、で相手を判断する音楽オタク。それは、ファッション含めサブカル人間の宿命的な(病い)だと思います。勿論それだけじゃない、壁を取り払って一歩踏み込めば新しい人間関係が見いだせるのだとは思いますが、あまり(気持ち)に重点が置かれ過ぎると判断を見誤りがちになるので、このキッチュな(病い)たまにはもアリかな、と個人的には思います。
この映画の陰の主役は我が道を行く俺様的音楽ギークのジャック・ブラックです。彼の出演作は他にも何本か観ましたが、やっぱり今作が私の中でのNo1です。彼の半ケツシーンは神棚に供えておきたいような名場面、、、ではないでしょうか。
そして、観た人には分かるハイ・フィデリティ私的名場面TOP5.
1,ラストのジャック・ブラックの熱唱
2,ロブとバリーが5枚売るぞとBETABANDを店内でかけるシーン
3,ジャック・ブラックの半ケツ
4,ロブがメモった夢の職業TOP5がローラに見つかるシーン
5,ロブとバリーとディックでイアンをボコボコにするシーン(妄想で)

原作は超、名作です。

2009/10/26

ラースとその彼女


ライアン・ゴズリング主演のハートウォーミングコメディ(たぶん)
兄夫婦の家のガレージに住むラースは、心優しく信仰心の厚い青年だが、極端に引っ込み思案で20代半ばなのに女の子と喋ることもできない。そんなラースを兄夫婦は心配して何かと世話を焼いていたが、ある日彼は(彼女を紹介する)と車椅子の女の子を連れてくる。しかし彼女はオーダーメイドのリアル・ドールだった。とうとうラースがおかしくなったと狼狽する夫婦に、町医者は(彼が妄想を必要としているのだから合わせなさい)とアドバイスする。そして兄夫婦のみならず町の住人までもリアルドールの(ビアンカ)をラースの為に受け入れていくが。。。
ラースと(ビアンカ)に対応する町の人々がちょっとすっとぼけていて、そのまんま(お伽話)のようです。多くを語り過ぎない脚本もよいですし、小ネタも効いています。
知らないうちに失ったものや心の傷はささやかだけれど、紅茶の茶渋のように致命的にこびりついてしまう事もあり、そういう普通の人々がこれからも生きて行く術を教えてくれる素敵な作品です。

ちなみに、リアル・ドールとは違いますが、最近の街角のマネキンも思わずキュンとなっちゃうようなカワイイ子が増えた気がします。

2009/10/23

その男ヴァンダム


というわけで、映画です。
最近の大ヒットはジャン・クロード・ヴァンダム主演のセルフパロディ映画、(その男ヴァンダム)です。
私は彼の(ユニバーサル・ソルジャー)や(タイムコップ)が結構好きで、きれいなアクションやちょっと母性本能くすぐられちゃう系の佇まいなんかも好みでした。しかし今やハリウッドでも(あの人は今)状態。映画に出てくる彼の状況はかなりの部分事実なんじゃないかと勘ぐっちゃう程の落ち目っぷりです。
その状況を逆手にとったか焼けくそになったのか、厳しくも愛情溢れる監督とのナイスタッグでただの自虐パロディに終わらない、ブラックでシニカルでリリカルで見事な作品になっています。
ストーリーは出演作はビデオ屋直行、復帰をかけた作品はセガールに取られ、娘に嫌われ預金は底をつきズタボロなヴァンダムが傷心の状態で故郷に帰郷。親権争いの弁護士費用を捻出すべく立ち寄った郵便局で強盗にあい、人質になのにブチ切れ有名人として犯人にしたてられ。。。
終盤の彼の独白は秀逸です。目指せ次ぎのミッキー・ロークです。
終止不憫で痛々しいのですが、ラストには素敵なハッピーエンドが用意されております。

blogにしちゃいました。

散々迷ったmemo欄。
結局放置状態になっておりましたが、blog形式で復活いたしました。
基本最近観た映画やそんなものをユルユルと書き連ねていく予定でございますので、今後もよろしくお願いいたします。