2009/11/26

ウォッチメン


私の大好物のジャンル、アメコミ・ヒーローもの。
予備知識なしに観たのですが、かなりダークな異色作でした。
舞台は80年代、ソ連との冷戦真っ最中のアメリカ、犯罪が蔓延る社会に現れた自警団の集団が(ウォッチマン)です。(正確には2代目ですが、まあよいとして)元が人間ですからパッと見コスプレしたヒーローおたく。性格もおのおの一癖二癖あり、彼らのキャラクターだけで(ヒーロー論)をご飯3杯分くらい語れちゃいそうです。そしてニクソンが打ち出した法律でヒーロー活動が違法になり、それぞれ隠居したり、政府直属になったりもぐりで活動したりしていたところ、何者かによってかつてのウォッチマンの一人が殺され、もぐりのヒーロー(ロールシャッハ)が事件の真相を探るうち、驚くべき事態に直面し。。。
この作品のキーマンの一人が(ミスターマンハッタン)というヒーローなのですが、彼だけ科学事故の影響で超自然的な存在となっていて、ウォッチマンの一員でありながら彼だけパワーも存在も異質です。地球を生かすも殺すも彼次第な力を持っているため、価値観も常人とかけ離れてしまい、まるで旧約聖書の(神)のよう。服を着るのも嫌になったようでしまいにはパンツすらはいていません。
この(ミスターマンハッタン)のモロ見えと、グロテスクな描写のせいか本作はR15指定です。
なんとなく(デビルマン)の世界感を彷彿させる気がします。

2009/11/15

その土曜日、7時58分


シドニー・ルメット監督の社会派サスペンスです。
一見エリートとして成功しているが麻薬に溺れ、会社の金を横領している兄が、娘の養育費も払えないうだつのあがらない弟に強盗話を持ちかける。ターゲットは両親が経営する郊外の宝石店。勝手知ったる店ならば、誰も傷つけず大金を手に入れられるはずだった。しかし、現実はそう簡単にいくわけもなく。。。

兄役のフィリップ・シーモア・ホフマン、弟役のイーサン・ホークをはじめ、キャストは好演しております。登場人物皆が問題を抱えていて自己中心的で、誰かに感情移入するのは難しいです。物語の軸になるのは(家族)ですが、それぞれが相手に対して抱いている不信感や冷めた感情、目的を正当化する為のエクスキューズにしていた不満が露呈した途端、まるで転がるように悲劇が連鎖していきます。
まるで(ハムレット)や(タイタス・アンドロニカス)のようなシェイクスピア悲劇を観ているような感じがしました。

原題は(Before The Devil Knows You`re Dead)。ナイスタイトル。

2009/11/09

ヤング@ハート


アメリカに実在するシルバーコーラス隊のコンサートまでの数週間を追ったドキュメンタリーです。
このコーラス隊のレパートリーはポップやロック。それもストーンズ、クラッシュからソニックユースまで幅広いです。彼らは特別にロックが好きというわけではないので、あれやこれや試行錯誤で課題曲を自分達のものにしていきます。主催者のボブはスパルタで彼らを老人扱いせず、厳しく駄目だしし、必要ならメンバーチェンジも辞しません。そう、彼らは本当に(プロフェッショナル)なのです。そして(特別)な人達です。平均年齢は80以上だけど、言葉は明白で哲学的、そして映画的です。すごく素敵な映画なので、本当に感動したのですが、この映画の欠点はドキュメンタリーである事が信じられないくらい(完璧過ぎる)ことだと思います。
人生のオマケ期間を生きる彼らは、途中挿入されるミュージックビデオのような映像さながらビートルズの(マジカル・ミステリー・ツアー)のように思えます。
何だかちょっとけなしているような感じになってしまいましたが、色んな人にお薦めしたい素敵な映画です。
ただ本当に(完璧過ぎる)んです。